ハーブと暮らしnote
HMCフィトテラピー通信 〜睡眠〜
Date:2024.12.4
Category:ハーブレッスン
Writer:佐藤
HMCフィトテラピー通信では、こころとからだにまつわるテーマを毎月設け、ハーブや精油を用いた日々のケアや過ごし方についてお伝えしていきます。
暮らしの中にフィトテラピーを取り入れて、植物のある暮らしをより多くの方に愛しんでいただけるようご提案していきます。
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皆さん、朝はすっきり爽やかに目覚めていますか?
お店のお客様でも睡眠にお悩みを抱えていらっしゃる方が多くいらっしゃいます。
厚生労働省eヘルスネットの情報によると、日本人の平均睡眠時間は減り続けており、OECD(経済協力開発機構)の調査報告でも日本人の平均睡眠時間は調査対象国33か国の中で最も短かったそうです。
まさに国民病ともいえるのではないでしょうか。
ただ単に長い時間寝ればいいというわけではない、ということは周知のこと。
必要なのは”良質な睡眠”です。
良い睡眠の目安として、
・すっきりと爽やかに起床できる
・日中にしっかり覚醒し集中力や判断力があり疲れにくい状態である
といったことが挙げられます。
一方、不眠の種類は様々で、
・寝付けない
・途中で起きてしまう
・眠りが浅いような気がする
などなど。
不眠の原因は、身体的痛みがある、心理的にストレスを抱えている、夜のお仕事や夜勤のシフトがありリズムが乱れるなどが挙げられます。
どれも交感神経と副交感神経のスイッチが切り替わりづらい状態が原因の一つで、なるべくご自身のライフスタイルに合わせてリズムを作っていくことが一助となります。
また不眠の状態が続くと、人の感情を読み取る力が低下するとも言われており、人間関係の悪化にも繋がると言われています。
睡眠が健康の維持のために大切だとは何となくわかっていても、その具体的な役割とは何でしょうか。
眠っている間は筋肉が弛緩して脳と身体の疲労回復の時間となり、一日の疲れを癒し明日に備えています。
脳の疲労回復は集中力や記憶力や考える力の維持に繋がり、認知症の原因の一つのアミロイドβ(アルツハイマー型認知症の原因物質の一つ)の蓄積を防ぎます。
そして傷ついた細胞を修復し、免疫物質を作ります。
また適切な食欲のバランスを担っているホルモンの分泌も適正に行われます。
肥満対策にも良質な睡眠が関わっているのです。
このように良質な睡眠には健康的な暮らしを支える大切な役割があり
交感神経と副交感神経を切り替えるためのリズムが大切なんですね。
暮らしにリズムをつくる方法として、ハーブティーを活用してみてはいかがでしょうか。
■朝<活動のスイッチを入れる>
ブレンド:Good morning
シングル:ギンコウ
■昼<リフレッシュ・活力>
ブレンド:Herb De Coffee
シングル:シベリアンジンセン
■夜<リラックス・安眠>
ブレンド:Good night
シングル:リンデン
東洋医学の観点からも睡眠についてみていきましょう。
ひとつ目は、季節に合った睡眠をとるという考え方です。
人も自然の一部ということを認識し、日の出と日没を感じながら過ごすことが一年のサイクルで養生に繋がります。
例えば冬は春に向けてエネルギーを蓄えたい、いわば冬眠のように活動を控える季節となるので
「早く寝てゆっくり起きる」。日没が早く日の出も遅い時間に合わせた過ごし方です。
秋冬の身体が閉じるイメージの時期に、しっかり栄養が入るように、日中にしっかり身体を動かし無駄なものはそぎ落としておきましょう。
ふたつ目は時間に関して。
午後11時〜午前3時くらいは「胆」と「肝」が活発に働く時間とされています。
新陳代謝が活発に行われ、全身の血液が肝に戻り解毒と身体の修復がなされて、疲れが回復し翌日に備えます。
このことからも季節を通して午後11時までには就寝して、
起床時間は季節によって太陽が昇る時間を意識するといいサイクルになっていくのではないでしょうか。
最後は、陰陽のバランスです。
昼の太陽が出ている時間は「陽」、沈めば「陰」の時間となります。
「陰」の時間は身体に必要な「水」や静寂の性質を持ち滋養と関係しています。
静かで暗い時間には人も同じように静かに過ごすことでエネルギーが蓄えられます。
もし睡眠を取らずにいると「陽」が増えていき、火照りや寝汗をかく、イライラして興奮気味など熱の症状が出ると言われています。
私は睡眠不足の次の日は肌が敏感になり乾燥が気になります。
太陽が出ている時間はいきいきと、日が沈めばゆったりと過ごす。
陰陽を意識してメリハリのある毎日でバランスを取ることも睡眠の養生に繋がります。
⇒「肝」「胆」や「陰陽」についての詳細は、HMCのオンライン講座「陰陽五行フィトテラピー講座」で詳しく説明していますので、もっと知りたい!という方はぜひこちらをご覧ください。
まず朝は太陽の光をしっかり浴びましょう。
朝日を浴びることで約14時間後にサーカディアンリズム(日々の睡眠や体温の調整などのリズム)の調整に関わるメラトニンが松果体から分泌され、深部体温を低下させ休息状態へ導いてくれます。
そして就寝時間の一時間前からはリラックスタイムにしましょう。
お好きな精油の香りをまといながらストレッチするのも良いですね。
その時に交感神経が優位になるようなスマホや蛍光灯などの強い光を浴びないようにすることが大切です。
また、「眠れないかも」と考えすぎて神経が高ぶるのも悪循環です。
「明日のことは明日考えよう」「明日は眠れるだろう」と開き直って暗い部屋で目を閉じてみてください。
眠れないこと自体がストレスになってしまっているときは、
ご自身にフィットした寝具やパジャマを探してみるのもいいですね。
肌ざわりや吸湿性、通気性、保温性に優れた物を季節によって使い分けたりと
眠る時間を楽しみに変えてみてはいかがでしょうか。
では、フィトテラピーでは睡眠をどのようにサポートできるでしょうか。
「食べ物」と「香り」と「ハーブティー」の観点からおすすめしていきます。
<食べ物>
安神の効能がある食材を取り入れること。
安神の効能とは精神を安定させてリラックスする効能のことです。
手軽に取り入れられるなつめ(棗)がおすすめです。
チップスで気軽に、または煮込んでなつめ茶に、シロップ煮もいいですね。
自然の甘味が美味しく優しい味です。
また朝食を摂ることも睡眠に関わります。
血糖値が上がり体内時計の調整が行われ脳と体にエネルギーが蓄えられて日中の活発な行動に繋がります。
中でもタンパク質を含む食材を積極的に食べることで、
上記のメラトニンの材料となるトリプトファン(アミノ酸の一種)が摂取できるのでおすすめです。
<精油>
快眠のためのおすすめは、ラベンダーやベルガモットなど酢酸リナリルやリナロールといった成分が主要に含まれている精油です。
神経のバランスを回復させてくれ鎮静作用により交感神経を鎮めてくれます。
■ラベンダー・トゥルー<精油>
■ベルガモットFCF<精油>
基本的にはご自身でお好きな香りを見つけることです。
「いい香り」と思うことがすでにリラックスへの第一歩となります。
<ハーブティー>
ハーブティーもお好きな味を飲むことで気持ちが落ち着くものですが、おすすめのハーブをいくつかご紹介します。
■ジャーマンカモミール
万能ハーブですが、その働きの一つとして心を穏やかに心身ともに緊張を緩めてくれます。
『ピーターラビット』の中で、興奮冷めやらぬ状態で帰宅したピーターに
お母さんがジャーマンカモミールのお茶と一緒に寝かしつけてくれる場面があります。
興奮と緊張から解放すること願った母のやさしさが、カモミールティーから伝わります。
■バレリアン
個性的な香り(イソ吉草酸)がクセになる古くから不眠に使われているハーブです。
強い緊張を緩めてくれるハーブでこわばった筋肉の痛みにも役立ちます。
少量でもその効果を発揮するので量に気を付けてください。
また車の運転をする前は摂取しないようにしてください。
■パッションフラワー
交感神経と副交感神経が切り替わりづらいと感じる時に役立ちます。
不安からくる落ち込みで眠れない時に植物性のトランキライザー(精神安定剤)として役立ちます。
バレリアンとブレンドしても良いでしょう。
3つが入ったブレンドハーブティー
■イライラ・カリカリGood-bye〜Stress care〜
一日の疲れを癒し、身体と心の緊張をほぐしてくれます。
ハーブティーには穏やかな利尿作用があるものが多いので、就寝直前に飲用すると夜中にトイレに起きてしまうこともしばしば。
なるべく夕食後までに飲むと良いでしょう。
イギリスの劇作家であり詩人のウィリアム・シェイクスピアは睡眠について数々の言葉を残しています。
“Nature is the gentle dear nurse who gave it to man for a pleasant sleep”
「快い眠りこそ、自然が人間に与えてくれた優しく懐かしい看護師である」
季節はもちろん、生活環境や年齢によっても睡眠の状況は変わるものです。
あまり深く考えず、ご自身にとって「心地よい」「気持ちいい」ことが何か知っておくことは質の良い睡眠の第一歩、ひいては健康への第一歩となります。
不眠といっても症状はひとそれぞれ。フィトテラピーが皆さまの快眠の力添えとなりますように。